シーツと薔薇とリタっち、という光景が突然浮かんで、カッとなってTwitterに書いた話です。
謎すぎる時間軸・謎すぎるシチュエーションとなっておりますので、ご注意ください。
花びらを拾い上げぱらりと落とすと、首筋に赤が重なり、文字通り赤い花が咲いた。それをまた拾い上げようと手を伸ばせば、かすかに触れた指先にぴくりと体を震わせた。
「ん……」
ゆっくりとまぶたが開かれる。シーツに真紅の花びらが散った、その真ん中にあどけなく眠る少女の瞳は、翡翠色の宝石のようだった。まだとろんと眠たそうな眼をしてこちらを見る。
「ねえ、それ」
「ん、これ?」
赤い唇がゆっくり開かれる。耳をくすぐるような声だった。片手に持っていた、一輪の薔薇を指さす。
「それ、貸して」
「あとでね、ちゃんとあげるから」
「なんであとでなのよ」
「棘があるでしょ、危ないから」
「あんたが持ってるのは危なくないの」
「大丈夫よ、ほら」
傷ひとつない指を見せる。よく見えるように手のひらを差し出すと、薔薇を指さしていた小さな手を重ね、細い指を絡ませてきた。
「やめて」
短くはっきりとした言葉だった。憂いを帯びながらもまっすぐな視線が射抜く。
「じゃあ、花びらならいい?」
白いシーツにいくつも散りばめられた花片を、もう片方の手でつまみあげながら聞く。こくりと首を小さく縦に振った。
たくさんの赤い花弁を手ですくいあげ、ぱらぱらと散らすと、少女のまとった白い布に小さな赤が次々と咲き、その様子は花の精とも見えた。
「妖精さん」
「なによそれ」
そう呼びかけると、とっさにしかめ面をする。
「お願い、きいてくれない」
可愛らしく眉をひそめる顔をのぞきこむように近づいた。髪にはさまった花びらをひとつひとつ払うように指でさらさらと梳かしてやる。
「……いいわよ」
少女は静かな声で答えると、翠色の瞳をゆっくりと閉じた。それを見て、暖かな頬に指を這わせる。薔薇と同じくらい赤く艶やかな唇が、すう、とかすかに開かれた。その赤を、まるで花を摘み取るような禁忌をおぼえながら、そっと啄ばんだ。
あとがき
あまりにも謎すぎるシチュエーションですみません。
リタっちには赤が似合いますよね。薔薇の花びらに埋もれるリタっちは美しくそれでいてどこか危うい匂いがするんだろうな……とその一点のみで突っ走って書いてしまいました。
ありがとうございました。