朝焼け色のあなたへ 後語り


 初めて書いたレイリタである『煙草とあなたと私の家』は、なんだかちょっとさみしい終わりだったので、ずっと続きを書きたいとここ数年の間思ってました。初めて書いた話なのになあ……と心残りだったので。

タイトルはいつも最後に決めるのが常なんですが、『朝焼け色のあなたへ』というタイトルはわりと早めに決まりました。もう書き始める前に決まってたといってもいいくらい。元々朝焼けというモチーフが『煙草とあなたと私の家』にあったので、後日譚であるこの作品にも適用しようと思いました。 

朝焼けの中で二人は再会する、それを目指して書こう……そう思ったのに、なかなか再会しないんですねこれが……おっさんの一人称で長い話を書いたのはほぼ初めてだったのですが、自分の中では恒例の『おっさんが悩みすぎて話が一向に進まない現象』が起こり、物語の4分の3くらいまでリタっちが出てこないという……これでいいのか……?と悩みつつの執筆でした……。

 

 カバーのデザインをしてくれた友人には、書き下ろしは二人が再会する話だと伝えていて、あのデザインは「やっと帰ってきたレイヴンをコーヒーもペンも放り出して迎えに行くリタ」というイメージで作られたそうです。

実際には迎えに行く場面とかはないんですけどね……。でもどこでどんな風に再会するかは決めずに書き始めたので、あの再会場面はおっさんが散々さまよった結果と言えるかもしれません。自分の中で、ダングレストには高台の広場があるという設定があるので、それを活かせてよかったです。リタっちは初めて煙草を吸ったときから、あの場所で煙草に火をつけて、煙がのぼっていく遠くの空をずっと見ていた。これも最初から決めてたことではなくて、おっさんが漂う煙を辿ったところからすべて決まりました。書いてるとこういうことばかりで不思議ですね。

 

 煙草の火をつけるときに、新しい火の精霊術を使うリタっちと、船の上で火種がないおっさんっていうのはなんとなく意識した対比描写だったりします。二人の使える魔術の属性が違うの、とても好きです。

 おっさんにとってリタっちはどんどん前に進んでいく存在であり、引き換え自分はずっと同じところにとどまっていると思っている。だからこそ自分と共にある未来を望んでしまったことから逃げようとしたのだと思います。いつまでもこんな生活が続けばいい、そう思っていたのは二人とも同じなのに、おっさんはその思いを封じ込め、リタっちは自分が何も分かっていない子どもだったからだと後悔をすることになる。最初に『煙草とあなたと私の家』を書いたときにもこういうことは考えていたのですが、後日譚を書いたことでそうした二人のすれ違いについて改めてちゃんと考えられてよかったです。