カランと瓶の底が鳴る。最後の赤い一粒がころりと転がりおちる。この瓶の中身がなくなるまでに来なければ、会いに行ってやろうと思っていた。けれど綺麗で甘いこの菓子にはついつい手が伸びて、いつの間にか全部食べてしまうところだった。
――リタっちが好きそうだなって思って。
いつも買ってくる菓子とはちょっと変わっていた。瓶の口に結んであったリボンは、ほどいたあとうまく結べなくて、不格好に巻きつけるようにして置いてある。
「……今度は口に突っ込んでやるわ」
手のひらに余るくらいの大きさの瓶が、すっかり空になるくらいの時間が経っていた。また買ってくるから、吹き飛びそうに軽い約束を自分とこの一粒だけが覚えている。
小さな鞄ひとつ持って、勢いよく扉を開ける。歩きながら、最後の一粒を噛みくだく。飲み込むと吐く息まで染まるようで、ぐっと唇を引き結ぶ。甘くて甘くてむせ返りそうなこの味を、ぜったいに思い知らせてやるから。