息を吐くように男は嘘をつく。息を吸うようにそれを受け入れてしがみつく。温い胸に頬をすり寄せると、レイヴンはそれがリタの愛だと受け取って抱きしめかえしてくれる。
騙されるのは嫌いだった。嘘で弄ばれるのも許せなかった。でも今となっては、どちらが騙しているのかわからない。嘘を怒らなくなったリタに甘えるように、レイヴンは今日も何かを隠して笑う。
けれど胸のうちで名前を呼ぶと頭を撫でる手のひらは怯えたように震える。取りつくろうように明るい声が返る。リタは目を閉じて歌う。伝える。ひとつの本当を返す。ふたりでここにいるということだけが、確からしくあるように。