めずらしく雪が降った日、布団からなかなか出てこないリタを外に連れ出した。
「なんでこんな寒いのにわざわざ」
あと何回見られるか分からないから――そんなことを言ったらまちがいなく怒られるので、にかっと笑う。
「雪だるまつくろ」
「なんでそんなバカっぽいこと」
「リタっち知らないのー? 雪だるまひとつ作るのにも緻密な計算がいるのよ? 出来上がりによってリタっちのこれまでの経験が活かされると言っても過言ではないわね」
どう考えても過言だが、彼女はすっかり乗り気になったようだ。そうして大きな雪だるまが完成するころには二人とも少し息があがっていた。近ごろ寒さのせいでこもってばかりいたからだ。
「はあ……どうよ、あたしの成果は……」
「うん……申し分ないわね……」
疲れた顔を見合わせて、思わず笑ってしまう。
「気がすんだ?」
「おっさんが遊びたかったみたいじゃない」
「最初からそうでしょ」
得意げな笑みにかなわないなと首を振る。雪だるまの周りに足跡をつけて楽しむリタをながめて、ふと思う。
いつか溶けてなくなるのなら、彼女の歩いた証になりたい。うすれて埋もれても、踏みしめるたびに残っていく、そんなものになれたらいい。
リタのあとを追うように歩くと、雪だるまの陰からひょこっと顔がのぞいて、楽しそうに笑った。