あきらめられない、ふたり

リタからレイヴンへの愛の言葉:星降る夜に、ベッドに寝転びながら「だって、どうしても諦められない」

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暗い部屋の中で、リタは目を覚ました。宿屋の一室、明かりの消えた部屋からは星空がよく見える。夜は思っていたよりずいぶんと明るいものなのだとリタは思った。その星空を、人影が遮っていた。 

「……まだ起きてたの?」

「ありゃリタっち、起こしちゃった?」

人影は振り返ってこちらを向く。暗闇の中で外の明かりに微かに照らされたその顔は、なぜかとても神秘的なもののように見えた。

「べつに、偶然目が覚めただけよ。なにやってんのよ」

「いんや、ちょっと星見てただけよ」

その言葉にリタももっとよく見たくなって、起き上がり、窓のほうへ近づく。そしてもう一つのベッドに座っていたレイヴンの隣にぽすんと腰かけた。

「ちょ、ちょっとリタっち……」

「ほんと、きれいね」

リタは昔よく星の本を読んでいたことを思い出した。もっとずっと小さなころ。 

「あたしも、星は好き」

「そ、そうなの?なんていうか、意外だわ」

「意外ってどういう意味よ」

「いやいや、いちいち突っかかんないでってば」

そのとき、キラリと一瞬光るものが目の端に映った。

「流れ星……」

「すぐ消えちゃったねえ、願い事を言う間もないわ」

「三回願い事を言う、ね……」

「お?リタっちにしてみれば非科学的な話じゃないのそういうの」

「そうね、そうかもしれない」

 窓の外のきらめきは、リタの心をどこか浮き立たせていた。意識がいつもよりふわふわとして、夢見心地、とでもいうのだろうか。すぐ傍らにある、ふれられない温もりのことをリタは考えた。

「あたしも、どうしようもなくなったらそういうのにも頼るかもね」

「どうしようもなくなったら?天才少女のリタっちにもそんなときがあるのね」

飄々と言ってみせるその様子に、リタはふう、とため息をついた。いろいろ考えてみてもなにも変わらない。まさに流れ星に願いを託したい気分だった。

「今の自分じゃどうしようもないって思うことなら、願ってみたくもなるわ」

そう言いながら、リタはレイヴンの背中の後ろに寝転がった。リタの視界は紫でいっぱいになる。その視界も落ちてくる瞼によって閉ざされようとしていた。

 

「だって、どうしても諦められないんだもの」

 

その言葉を半分寝言みたいに呟いて、リタは夢見心地だった意識を完全に手放した。

「リタっち、ここおっさんのベッド……」

そんな言葉がもう夢の中にいるリタに聞こえるはずもなく、レイヴンは困ったように頭をかいた。

「……そっか、諦められない、か」

一人呟いた声に応えるように、またひとつ星が落ちた。


あとがき

 

星というワードはレイリタに絡めやすくて好きです。外伝小説の設定をけっこう使わせていただいてます。(外伝小説「青の天空」にはリタが幼少期星が好きだったという描写がありまして。後半がちょっと駆け足ですが、おすすめです)

レイリタはこういう煮え切らない話でも似合うかなと。はっきりしないレイリタが好きです。