キスマークをつける

Twitter診断の「CP創作お題をアンケで決める」で書いたお題その1です。

4つのうち3つが同票になったので3つとも書きました。

 

お題のとおり、ちょっとそういう雰囲気な上に甘々でもないのでご注意です。


部屋に入るなりいきなりキスをしたので、胸を手のひらで押し返された。

「ちょっと、おっさん、っ」

そのまま寝台の上に押し倒し、服に手をかける。黙ったままのレイヴンを、リタは戸惑った眼差しで見つめる。昼間、リタがギルドの若い男と話しているところを見た。ただそれだけだった。

「なにか、あったの」

レイヴンは答えずに首元に顔を埋める。

 

少女はいつの間にか大人になった。髪も肌も唇も、なにもかもが惹きつけてやまない。舌先で首筋をなぞると、ふるりと身を震わせる。この立ちのぼる匂いを、滑らかな肌を、漏れる甘い声を、自分以外の人間が味わうときが来るのか。想像して、呼吸が止まる思いがした。

とても醜い感情だと思えた。粘ついた泥が渦巻くようで気持ちが悪い。いつの間にこんな分不相応なものが――そう思いながら、体はひとりでに動き、白い肌を貪る。首筋の薄い皮膚に吸いつくと、ぴんと身を反らせる。頭が白く弾けて、何も考えることができないまま肌を吸った。それは新雪を荒らすような心地に似ていた。

 

首に散った赤い跡は、首輪のようで少し痛々しく見えた。けれど、湧き起こるこの感情は、愉悦を含むものだ。レイヴンは呆然と、傷跡の残る首筋に触れた。感情が泥水のように溢れて窒息してしまいそうだった。

 

 

そのまま放心していると、リタはふとレイヴンの手を取って、指先に唇を寄せた。かと思うと、指先を口に含み、がぶりと歯を立てた。

「いつっ」

レイヴンが思わず声を出したのにも取り合わず、五本の指を律儀に一本ずつ力強く噛んだ。

「これで、公平でしょ」

リタは、やってやったというように歯を見せて軽く笑った。指の関節に残った噛み跡は、じんと痛んで、鮮明な感覚を取り戻させた。レイヴンはその指輪に口づけて、泣き出しそうに顔を歪めた。


あとがき

 

キスマークという言葉から、どうしてもおっさんの独占欲を連想してしまってこうなりました。

おっさんは独占欲というような「自分のもの」という概念が薄い分、それが生まれたらコントロールできずに飲み込まれるタイプだろうなあと思いました。

もっと甘々な話にもできたなあと書いてから思いましたが、個人的にはこういう感じのほうが性癖だったりします……笑

ありがとうございました。