カテゴリ:学パロ・現パロ



チャイムが薄暗い部屋に鳴り響く。きっちりと閉めた用具棚のガラス扉から視線を逸らして、レイヴンは窓のほうを見る。それなりに大きな音で鳴っているのに、ソファのこんもりとした山はぴくりとも動かない。 近くまで行くとブランケットの端から頭が少しだけ見える。覗き込むと、かたくなに閉じられたまぶたまでは確認することができる。...
さっきからカップを持ち上げる回数が増えている。コーヒーを飲んでも飲んでも喉が渇いているような気がするし、作業の手はすっかり止まっている。じいっと向けられる視線にはとっくに気づいている。けれどぎりぎりまで気づかないふりをする。 「こっち、見なさいよ」...
 散る花を見て涙みたいだと思ったのは初めてだった。きれいだと心が洗われると人が言うのを雑音のように聞き流していた。その意味をこんなときになって知るなんて思ってもみなかった。 「いつ出発なの?」 「あさって」 「そっか」...